僕は会社員時代にHARESを立ち上げましたが、当初はHARESだけに専念して独立するつもりはありませんでした。しかし2016年に娘が生まれ、「娘と過ごす時間を最大化する」ために “育休的起業” を決意、娘が小学校に上がるまでの5年間という期間限定で、「スケール志向の事業はつくらない(あえて伸ばさない)」「社員を雇用しない」「資金調達はしない」というルールで独立しました。
それで “ぼっち社長” になったわけですが、リソースの最適配分というのが企業経営の基本であるのに対し、僕の場合は使えるリソースが自分しかいないんですよね。そのため、リソースが有限であるということと常に向き合い続けることがぼっち社長の宿命で、いかに無駄を徹底的に省くかが鍵となってきます。
そこで僕が取り組んでいるのが、ヒトがやらなくていいことはどんどん自動化していくということです。たとえば問い合わせメールに対しても、自動返信で対応したりテンプレを活用して返信したりと自動化できることは自動化させています。
また、ヒトがやらなくてはいけないことはできるヒトに任せる、アウトソースすることも大切にしています。定例打ち合わせの議事録やアジェンダ作成、提案書作成など、ドキュメントまわりの作業業務は基本アウトソーシングをしているんですね。
提案書作成をどうやってアウトソーシングするのかと聞かれることもあるのですが、僕が考えて作業をお願いするというのではなく、目線を合わせて自分で考えて作業できるような信頼できる方をアサインし、お願いしています。
やはり餅は餅屋。たとえば大きい企業だとなぜか自前主義で、アウトソーシングせずに自社で採用しようとしがちですが、スタートアップであればスピード感を損なうよりも、その道のプロに任せ、共につくっていくという発想が広がっています。
ぼっち社長やフリーランスも同じで、必ずしもすべてを自分でやろうとしないというのは非常に大切な考え方です。自分という限られたリソースしかないからこそ、「自分だからこそできること」「自分にしかできないこと」は何かを常に考えることが重要なのです。
複数のプロジェクトや案件に関わっていると、TODOリストに書いているうちに他のタスクを忘れてしまうくらい、タスクが多くなりがちです。そのため、タスク過多でキャパオーバーになってしまい、結果やるべきことにリソースを集中できないといったことにならないよう、いかに自分でボールを持たないようにするか。
たとえば、僕の場合は打ち合わせの後には必ず30分、タスク消化のための時間を設けており、TODOリスト化するのではなく、打ち合わせ後すぐにタスクを消化するようにしたり、自分で手を動かさずに済むよう自動化させるだとか、アウトソーシングするなど、そもそもTODO化しないといった発想が大切だなと感じています。
ぼっち社長やフリーランスに成り立ての人が陥りがちなのが、自分がやらなくてもいいことを自分でやってしまうことだと思います。僕自身、過去にリソース配分を間違えてしまい、自分のキャパシティを超えた業務量を抱え、結果的にメンタル面で弱ってしまったことが何度かありました。
特に会社員から独立すると、いままでバックオフィスがいたり、部下やアシスタントがいたりして、自分のミッションに集中できる環境があったのが、全部を自分でやらないといけない環境へと一変します。
そこでセルフマネジメントという言葉を勘違いして、自分ひとりでなんとかしようとしてしまうケースが多い。そして独立直後はご祝儀発注のような形で案件が多かったりするのに対し、すべて自分でやろうとしてしまうがゆえにパフォーマンスが低下し、案件をただ “こなす” だけになり、クライアントが離れていってしまうといったケースは少なくはないように見受けられます。
しかし、会社にバックオフィスなど間接部門があるように、ぼっち社長やフリーランスであっても、実はツールや業務アシスタントサービスなどを活用することで自分のミッションに集中できる環境はつくれるんですね。
そのため、何が自分のやるべきことで何をやるべきでないかを見極め、あらゆる外部リソースやツールを活用して、いかに自分のパフォーマンスを最大化させるための環境をデザインできるかが重要であると思います。
そしてツールは気分によってパフォーマンスが変わるということはありませんが、アウトソーシングする場合は「誰に依頼するか」という人選が非常に大切です。
ヒトに依存しないような業務であれば業務アシスタントサービスに依頼してもよいでしょうが、ビジネス成果に関わるような業務は、ちゃんとしたアウトプットが期待できる方に依頼しないと、指示出しや修正など想定以上のコミュニケーションが発生し、「アウトソーシングしたのに余計に手間が発生してしまった」ということになりかねません。
そこで僕の場合はスキルだけでなく、人柄面も大事にして人選するよう心がけており、基本的には人づてに紹介してもらっています。そしてスキルフィットではなく、バリューフィットでアウトソーシングパートナーをアサインしています。
また実力があるにも関わらず、自分を安売りしてしまい、単価の安い仕事を多く抱えてしまって疲弊してしまうといったケースもあるでしょう。しかし、どれだけアウトプットの質が良かったとしても、発注者側から値上がりを提案するということはほぼありません。
そのため、安売りをしないということがまず大事ですし、単価感が見合う案件をいかに生み出すかという発想も非常に重要です。
では、僕自身がパフォーマンスを最大化するために、具体的に取り組んでいる3つの自動化をご紹介いたします。
1つめは、バックオフィス業務の自動化です。特にぼっち社長が必ず頭を抱えるのは月末の請求管理でしょう。僕の場合はメディア運営をしているので、ライターの方含め、毎月10〜20名近い方へ仕事を発注しています。
そして月末になるとそれぞれが何件納品していて、送られてきた請求書の件数や金額が間違っていないか目視で確認したりと、人力での請求管理は非常に手間がかかっていました。
そこで僕は発注から納品、検収、請求までを発注管理ツールを活用して行っています。検収が終わったものは自動でカウントされ、請求書が自動生成、受注者側にはツール上で請求書の内容を確認してもらって問題なければクリックして請求管理が終了と、請求管理にほぼ工数をかけずに済んでいます。
従来であれば、請求書の内容が間違っていたら受注者側に「請求書間違ってますよ」と連絡し、つくり直してもらい、PDFにしてまた再送してもらうなど、受注者側も手間が発生していましたが、ツールで自動化してしまえば発注者側も受注者側もラクになるんですよね。
また、クライアントに請求書を送る場合、企業によっては「郵送してください」と言われるケースがあります。わざわざ印刷して、送付状つけてと手間がかかるわけですが、請求書作成ツールであればワンクリックで郵送に対応してくれるサービスもあります。月末のそうした請求書まわりの業務はどんどん自動化していくべきでしょう。
続いて2つめが、テンプレによるテキスト入力の自動化です。たとえばGoogleドキュメントなどでアジェンダであったり、議事録であったりを作成されている方は多いと思うのですが、毎回同じ見出しを入力したり、過去のドキュメントを複製して内容だけ消して、といったことって地味に手間がかかるんですよね。
そこで二度起こりそうなことはすべてツールを使ってテンプレート化するということを心がけており、二回目以降は自動でテキストが入力されている状態からスタートできるようにしています。
冒頭でも触れましたが、問い合わせ対応もゼロからテキストを入力して返信するのではなく、ツールを使ってテンプレートテキストで自動返信対応。また自ら返信する場合も、返信テンプレートをあらかじめ用意しておくことで、メール対応の効率化を図っています。
そして最後に3つめが、案件発生までの流れを自動化することです。ぼっち社長やフリーランスは営業も自ら行わなければなりません。しかし自らやるべき領域で高いパフォーマンスを発揮するためには、営業に時間を割くよりも、そもそもでたくさん問い合わせが来るような、自ら営業せずとも自動的に発注が来る流れをつくることが大切であると考えています。
そのためにやるべきことはいくつかありますが、まずは自分が何者で、どういったことができるのかといったことをLPにまとめることをオススメしています。自分自身の棚卸しにもなりますし、LPをつくりSNSなどを活用して自動的に仕事がくる流れができれば、単価感の見合う仕事だけを受けたり、自身の単価感を上げていくこともでき、疲弊することのない自分のパフォーマンスを最大化できる環境構築が実現できるでしょう。
様々な業務を自動化するためには、ツール選定は非常に重要です。いろいろなツールを多用してしまうと、何をどのツールで管理していたか自分でもわからなくなってしまったり、効率化のためにツールを使っているはずが複数ツールをまたぐことで逆に作業が煩雑化してしまうといった “ツール分散問題” が必ず発生してしまいます。
そこで、僕の場合はなるべく1つのツールで完結できるようなものを重視しており、実際に活用しているのが下記3つのサービスです。